まぁ、それはそうでしょう。全く対照的なニュースがほぼ時を同じくして起きるとは思いもしませんでした。
片方では死者40人を超える大災害。しかし、ラグビーW杯は強豪のスコットランドを破り、4戦4勝で初の予選突破&ベスト8。あまりに対照的でどのように扱ったらよいのか戸惑いを感じています。
とりあえず、台風を見ていて思ったことですが、昨日朝7時50分時点での24時間降水量で観測史上1位を記録したところは、信越地方と北関東、東北地方がほとんど。
そしてこれらの地域で、多くの水害が発生しています。
さて、ここで、地元静岡はどうだったのかというと、12日午前8時から13日午前8時にかけての24時間雨量は341mm。上の表に挙がっている55地点の中で12番目に値する雨量を観測しています。ちなみに、12日1日分だともっと多くて401mm。これだと9番目にも値しますが、いずれにしても、市内を流れる安倍川・藁科川・巴川・興津川などの大きな河川の氾濫はありませんでした。安倍川の上流部に当たる梅ケ島では、597.5mmという雨量が観測されているにもかかわらず、です。
Twitterでは、【安倍川やばい】というキーワードで多くのツイートが引っかかりますが、実際には河川敷への流入程度で流れが土手を削るようなレベルではなく、これまでの何度かの増水と比べても、上回るほどではないという感じでした。
ちなみに、5年前には今回より雨量は少ないのですが、安倍川の河川敷はけっこうな被害を受けていました。
この時の台風はこちらです。
ja.wikipedia.orgこの時は2日で363.5mmの降水でした。
となると、400mm程の降水だと河川敷まで水はあふれますが、河川敷の物を流したり土手を削るほどまではいかないということでしょう。
これは恐らく、安倍川という川の2つの特徴によるものだと思います。
1つ目は、標高の高い源流から河口までが短く、下流部に入っても川の斜度が保たれていること。2つ目は、流域面積がせまいことです。
1つ目については、今回の台風で大きな被害が出ている、栃木~茨城県の那珂川と比較してみました。
安倍川より那珂川の方が3倍ほど長いのですが、下流部はかなりゆったりとしているのが分かります。縮尺が異なるので分かりにくいですが、例えば標高にしてラスト200mを下るのに、那珂川は約100kmほどかかりますが、安倍川は30km弱です。
試しに、ラスト10kmをグラフにしてみましょう。
那珂川は水戸大橋の少し手前の辺りが河口から10km地点になるのですが、このあたりで0.3mと、ほとんど河口と差がないことが分かります。
それでは安倍川はどうでしょう。
河口から10km地点は、狩野橋のあたりでしたが、この辺りでなんと標高は45mもあります。しかも、グラフも比例のグラフであるかのようにほぼ一直線に下っていきます。ですから、流れが緩やかになって行き所を失った水が左右にあふれるといった状況にはならず、上流から流れてきた水は勢いそのままに河口まで到達するということが考えられるのです。
次に流域面積です。安倍川と今回被害が確認された川の流域面積を比べてみます。
・安倍川 :567㎢
・鳴瀬川 :1,130㎢
・荒川 :1,150㎢
・久慈川 :1,490㎢
・那珂川 :3,270㎢
・信濃川 :11,900㎢
・利根川 :16,840㎢
・関川 :1,140㎢
・馬淵川 :2,050㎢
・北上川 :10,150㎢
・多摩川 :1,240㎢
・富士川 :3,990㎢
・阿賀野川:7,710㎢
・狩野川 :852㎢
・菊川 :158㎢
→参考:令和元年台風第19号 - Wikipedia
と、最後にあげた菊川以外、安倍川に比べて倍以上の(利根川にいたっては30倍)流域面積を持っていることが分かります。流域面積が広いということはその分集める水の量も多いということですから、今回のような場合は水害へのリスクは高くなるとも言えます。
また、地図を眺めていて気付いたことですが、安倍川は意外と川幅が広いですね。河口付近でも10km付近でも600mほどあります。しかし、那珂川は水戸大橋付近で500mに足りません。利根川はさすがに広く、利根かもめ大橋が1200mほどありますが、流域面積でいったら30倍のところで、幅は2倍ほどということになります。信濃川は新潟大橋の辺りで300mほどしかありません。
まだいろいろ見つかりそうですが、とりあえず安倍川が無事で済んだのは、流域面積が狭くそれほど大量には水を集められないうえ、急流であっという間に水が河口に達してしまい、なおかつ、分不相応と言えるほどひろい川幅がそれを余裕をもって迎えているというところなのだろうと思います。
あれこれ見ていたら、ずいぶん遅い時刻になってしまいましたので、本日はこんなところです。